はじめに
こんにちは、Raithing株式会社の今村です。
システム開発を初めて手がけようとしている方、あるいは過去に内製で経験はあるがアウトソーシングは初めてという方もおられるだろう。特にスタートアップ企業においては、システム開発の範囲や進め方に悩む場面が多いのではないだろうか。
本記事では、初めてシステム開発を行う際に押さえておくべきポイントを解説する。システム開発初心者の方はもちろん、経験者の方にもチェックリストとして活用していただければ幸いである。
システム開発を始める前に知っておくべきこと
逆説的に聞こえるかもしれないが、システム開発を成功させる鍵は「システム開発そのもの」ではない。まず重要なのは、自社のビジネス目標を明確に定義することである。
ビジネス目標を具体的に設定し、それを達成するために必要なシステムを詳細に考える必要がある。また、開発に要するコストや時間、必要なリソースを正確に見積もることも不可欠だ。目標が不明確であれば、これらの見積もりは曖昧になり、結果としてコストの膨張やスケジュールの遅延を招くことになる。
システム開発は技術的な作業だけでなく、ビジネス戦略と深く結びついている。そのため、経営陣と開発チームが一体となってプロジェクトに取り組む姿勢が求められる。
もちろん、開発の過程でユーザー検証を行い、その結果ビジネス戦略が変更されることも珍しくない。そのような場合に備えて、事前に変更を見越した開発契約やプランを策定しておくべきである。最も避けたいのは、多額の予算を投入した後でビジネス戦略の変更やユーザー検証の結果により、プロジェクトが中止となり、投資が無駄になることである。
ユーザー検証が目的であるならば、その部分に特化した最小限のプロダクトを作成すべきだ。この点については、以前の記事でも詳しく述べているので、ぜひ一読してほしい。
天才スティーブ・ジョブズでさえ、無数のアイデアに「ノー」と言っている。プロダクト開発において焦点を絞り、不要な機能や要素を排除することで、より優れた製品を生み出すことができるのだ。
失敗しないための心構え——スタートアップが陥りやすい罠
スタートアップ企業が陥りやすい罠の一つに、過度な楽観主義がある。アイデアがどれほど素晴らしくても、現実的な計画とリスク管理がなければプロジェクトは失敗に終わる可能性が高い。
また、技術的な課題を過小評価し、リリースまでのスケジュールが非現実的になるケースも多い。リソースが限られているからこそ、慎重な計画と堅実な実行が求められる。
さらに、「アジャイル開発だから要件定義を曖昧にしても後で修正すれば良い」という誤解も多い。アジャイル開発であっても、基本的な要件や目標は明確に定義する必要がある。曖昧なまま開発を進めると、結果として方向性を見失い、プロジェクト全体が迷走するリスクが高まる。
アウトソーシングを成功させるためのパートナー選びのポイント
ここまで、システム開発において失敗しないためにどうするかについて述べてきた。いくつかのことを述べてきたと思うが、パートナー選びは一方で非常に簡単だ。アウトソーシングを成功させるためのパートナー選びで重要なのはたった1つだけだ。
それは、信頼できるパートナーを選ぶことだ。
なお、信頼できるかどうかをさらに分解すると下記のようになる。
- 実績と専門性: 過去のプロジェクトや専門分野を確認する。自社の業界やニーズに適した経験があるかを見極める。
- コミュニケーション能力: スムーズな意思疎通が図れるか。言葉のキャッチボールが的確で、誠実な対応ができるか。
- ビジネス理解力: 単なる技術提供だけでなく、ビジネスの目的を理解しているか。提案や改善点を積極的に示してくれるか。
- 柔軟性: 変更や要望に柔軟に対応できるか。予期せぬ事態にも迅速に対応できる体制が整っているか。
これらの要素は定量化しにくく、感覚的な部分が大きい。また、自分とパートナーとの相性も重要である。他者にとって良いパートナーが、自分にとっても同様であるとは限らない。
パートナー選びのコツとしては、まず小規模な案件で協業してみることをおすすめする。お試し期間のようなもので、1〜2ヶ月もあれば相性を判断できるだろう。小さな案件での試行が難しい場合は、食事やカジュアルな場でのコミュニケーションを通じて相性を探るのも一つの手段である。
システム開発の領域を明確にする方法
システム開発では、事前にここまでやりますよ、という領域をしっかりと定義する必要がある。開発範囲が曖昧だと、後になって追加対応が発生し、コストやスケジュールが膨らむ原因となる。以下のステップで領域を明確にすると良い。
- ビジネス要件の整理: 何を達成したいのか、ビジネス上の目標を明確にする。
- 機能要件の洗い出し: 必要な機能やサービスを具体的に列挙する。
- 非機能要件の設定: パフォーマンスやセキュリティ、拡張性などの要件を定義する。
- 範囲の確認と合意: 開発範囲をステークホルダー全員で確認し、合意する。
最近のシステム開発では、アジャイル型で作りながらユーザー検証を行い、より良いものを作っていくという手法が主流だ。しかし、アジャイル開発だからといって要件定義を曖昧にして良いわけではない。基本的な方向性や目標を明確にした上で、柔軟に対応することが重要だ。
初めてのシステム開発チェックリスト——これだけは押さえておきたい事項
ここまでの内容をまとめてみよう。システム開発で押さえておくべきチェックリストになるはずだ。ぜひシステム開発を依頼する際は活用して欲しい。
- ビジネス目標が明確か: 何を達成したいのか、具体的に定義されているか。
- ユーザー検証の計画があるか: 最小限のプロダクトで早期に検証できるか。
- 開発範囲が明確か: どこまでを開発し、何が対象外かを明確にしているか。
- パートナーとの相性は良いか: 小規模案件やコミュニケーションを通じて確認したか。
- リスク管理ができているか: コストやスケジュールの見積もりが現実的か。
- 変更に柔軟に対応できる体制か: ビジネス戦略の変更に対応できる契約やプランになっているか。
- 関係者間で合意が取れているか: 経営陣と開発チーム、パートナー間で目標と計画が共有されているか。
- 要件定義が適切か: 機能要件と非機能要件が明確に定義されているか。
まとめ
初めてのシステム開発は多くの挑戦が伴う。しかし、正しい準備と心構えがあれば、その挑戦は大きな成功へとつながる。この記事で述べたポイントとチェックリストを活用し、システム開発プロジェクトを成功へと導いてほしい。あなたのビジネスが次のステージへ進むための一助となれば幸いである。